in vitro試験(皮膚透過試験・放出試験)と in silico解析(SKIN-CADシミュレーション)を組み合わせた評価例です.
【ある医薬品の経皮吸収型製剤について,放出試験とヘアレスマウス皮膚透過試験を実施し,その結果を使用して,SKIN-CADでヒト血中濃度シミュレーションを行いました】
① 拡散セルに製剤を貼付して,緩衝液への放出量を測定しました.
→ 累積放出量時間推移を理論式にカーブフィッティング計算して,製剤内拡散係数を算出しました.


② 拡散セルに,製剤を貼付した皮膚を設置して,緩衝液への透過量を測定しました.
→ ヘアレスマウスの正常皮膚(intact skin)と角層剥離皮膚(stripped skin)における累積透過量時間推移から透過速度(flux)と時間遅れ(time lag)を求めて,皮膚2層膜(角層+生きた皮膚)の拡散係数や分配係数を算出しました.
③ 放出試験及び皮膚透過試験で求めた各種パラメータ,ヒトの皮膚構造(角層厚み,皮膚毛細血管までの距離),ヒトのPKパラメータ(分布容積,速度定数)をSKIN-CADに入力して,計算を実行しました.


④ シミュレーション結果と臨床データを比較したところ,血中濃度時間推移はほぼ一致していました.
このことから,SKIN-CADを使って,ヘアレスマウス皮膚透過試験データからヒト血中濃度を予測できることが示されました.
上記以外にも,ヘアレスマウス皮膚透過試験データ+SKIN-CADヒト血中濃度シミュレーションの解析例があります.
また,他の動物種や培養皮膚についての研究例もありますので,以下をご参照ください.
- 森 大輔, 引間知広. 経皮吸収型製剤のin vitro/in silico評価法. 小島 肇夫 監修. 動物実験代替法とNew Approach Methodologiesの開発・利用動向. シーエムシー出版, 2023.
- 森 大輔. 経皮吸収予測におけるin vitro-in silicoアプローチ. 谷本学校毒性質問箱20, 2018.
- 森 大輔, 引間知広. 経皮吸収型製剤のin silico薬物動態評価. 第29回日本動物実験代替法学会, 2016.
- 森 大輔, 釘宮 健, 原田篤知, 引間知広. 経皮吸収型製剤のin vitro-in silico血中濃度予測法. 第30回日本DDS学会, 2014.
- 森 大輔, 釘宮 健, 原田篤知, 引間知広. In vitro動物皮膚透過データに基づいたヒト経皮吸収シミュレーション. 日本薬剤学会第29年会, 2014.
- Hikima T, Komatsu M, Mori D, Tojo K. Prediction of Percutaneous Absorption in Human of Nicotine from Marketed TTS using Three-dimensional Human Cultured Epidermis. 40th Annual Meeting & Exposition of the Controlled Release Society, 2013.
- 武内博幸, 石田真大, 浦野英俊, 杉林堅次. Yucatan micropig皮膚を介したin vitro透過性からニコチンテープまたはリドカインテープをヒトに適用後の血中濃度の予測. 薬剤学72(4), 251-261, 2012.